トップ画像
無線給電 第二章

執筆者: 2D

最終更新: 2021/03/02

第二章 電界vs磁界

現在実用化されている無線送電は主に電磁誘導方式と電界結合方式の2つである(他にはマイクロ波送電方式や超音波伝送方式も有るが、メジャーとは言い難い)。つまり、無線送電は電界と磁界のどちらかを伝送手段として用いる事が多いのだ。電磁誘導方式と電界結合はどちらにもメリットがあり、優劣付け難いものである。しかし、実用化という観点からすれば電磁誘導方式が圧倒的に優勢である。これはある程度の電力を簡単に送電できるという電磁誘導方式特有の手軽さが大きいと思われる。
電磁誘導方式は極端に言えば割れたトランスである。送電コイルと受電コイルを磁気的に結合させ、磁界を用いて電力伝送を行う。そのため、コイルに流れる電流が重要となる。また、コイル単体では誘導性負荷となってしまうのでコイルに共振コンデンサを接続し、共振を利用して力率を改善する事が多い。更に、Q値が高くなければ多くの電力を入力できないため、低損失なコイルを高い共振周波数で駆動することが鍵となる。しかし、この共振周波数は結合係数に依存するので位置によって伝送電力が変化してしまうという大きな問題点を抱える(ロバスト性が悪い)。これを如何に解決するかが電磁誘導方式の課題である。
電界結合方式は極端に言えばキャパシタである。水平方向のロバスト性が高く、ズレに強い方式であると言える。この方式は対向電極間に生じる容量(等価的なキャパシタ)を経由して負荷に電力を伝送する方式であり、電力伝送は電界によって行われるので、電圧が重要となる。また、高電圧で電力伝送するので流れる電流は小さく、電極での発熱が殆どない。しかし、地上では空気コンデンサそのものであるので容量が極めて小さく、周波数や電圧が低いとそのインピーダンスによって電力伝送をまともに行えない。仮に共振を利用しても電極間距離で容量が劇的に変化してしまうので、電磁誘導方式と同様の問題点を抱える。
つまりまとめると、電磁誘導方式はコイルの発熱と重量が問題となり、重量が問題となる宇宙空間では適用が難しい。しかし回路構成は簡単であり、地上に限れば有力な電力伝送手段である。電界結合方式はその性質上高電圧を用いるため感電の危険性や空中放電の可能性があり、地上では適用が難しい。しかし電極は金属箔などでも良いため極めて軽量であり、発熱をほとんど生じないため宇宙などでの適用が考えられる。なお、両者に共通する問題点として、受電側の位置や負荷によって送電電力が変化してしまい、場合によっては全く送電できなくなってしまうというものが有る。なお、水中では電磁誘導方式と電界結合方式の両方が検討、研究されており、手軽さや送電可能電力という面で見れば電磁誘導が、システム重量といった面で見れば電界結合が有利となる。

取得に失敗しました

2018年度 入部

Twitter