執筆者: ごま
最終更新: 2024/07/17
この記事はTypstシリーズの第4弾です。もしシリーズ内の記事を読んでいない場合は、ぜひ読んでみてください。 さて、この記事ではTypstで数式を記述する方法について解説します。すべての記述方法を網羅することはできませんが、レポート作成等の助けになれば幸いです。
Typstで数式を記述する際は、基本的に数式をドルマーク$
で囲みます。例えば、次のような記述をすると、文中に数式が表示されます。
数学における一次関数は、一般に$y = a x + b$と表される。
変数aとxの間にスペースを入れていることに気づいたかもしれません。Typstでは、基本的に単一の文字はそのまま表示されますが、複数の文字は何らかの記号、変数、または関数として解釈されます。そのため、スペースを入れずに単にaxとしてしまうとエラーが発生してしまいます。
もし複数の文字からなる数を記述したければ、二重引用符で囲むことで解決できます。
$y = a x + "const"$
ここまでの記述方法は、インライン、すなわち数式を他の文と同じ行に埋め込む方法です。もし数式を独立した行に表示したい場合は、$
マークと数式の間にスペースを挿入します。
数学における一次関数は、一般に
$ y = a x + b $
と表される。
独立した数式において、改行を行いたい場合は \
を使い、&
記号で数式の位置を揃えることができます。
$ sum_(k=1)^(n) k &= 1 + 2 + 3 + ... + n \
&= 1/2 n(n+1) $
基本的な数式の記述方法は以上です。次に、数式の記述方法を拡張するための記法について解説します。
単に平方根を使用したいときは、sqrt
関数を使用します。
$ sqrt(3 - 2 sqrt(2)) = sqrt(2) - 1 $
こんなふうに二重根号も記述できます。また、n乗根を記述する場合は、root
関数を使用します。例えば、aのn乗根はroot(n, a)
と記述します。
絶対値記号を使用したいときは、abs
関数を使用します。また、ノルムを表す場合は、norm
関数を使用します。
$ abs(-3) = 3 \
\
norm(x/2) $
Typstには、極限や三角関数を記述する際の演算子があらかじめ用意されています。例えば、次のように記述できます。
$ lim_(x->0) (sin x) / x = 1 $
Typstには他にも、あらかじめ用意されている演算子として逆三角関数や双曲線関数などがあります。詳しくは公式ドキュメントを参照してください。
Typstには総和を表すシグマ記号や集合を表す記号、演算子を記述するための記法が用意されています。詳細は他の記事でも解説しますが、ここではいくつかの例を示します。
$ sum_(k=1)^(n) k = 1 + 2 + 3 + ... + n $
$ F(omega)=integral_(-oo)^(oo) f(x) e^(i omega x) d x $
ちなみに、無限大を表す記号はアルファベットのオーの小文字(o)を2つ並べたもので表します。正直これはinftyとかで良かった気もしますが...。
ある要素が集合に含まれることを表す記号は、LaTeXと同様にin
を使用します。
$ x in {1, 2, 3} $
ある要素が集合に含まれないことを表す記号はin.not
を使用します。
$ x in.not {1, 2, 3} $
この他にも様々な記号が用意されていますが、ここでは一部を紹介しました。詳しくは公式ドキュメントを参照してください。
分数を記述する際は、frac
関数を使用するか、単に/
を使用します。
$ frac(1, 2) + frac(1, 3) = frac(5, 6) $
$ 1/2 + 1/3 = 5/6 $
上付き添字は^
、下付き添字は_
を使用します。これはLaTeXと同様なので慣れている方も多いかもしれません。
$ a^2 + b^2 = c^2 $
$ x_1 = frac(-b + sqrt(b^2 - 4a c), 2a) $
ベクトルを記述する際は、vec
関数を使用します。
$ vec(a, b, c) dot vec(1, 2, 3) = a + 2b + 3c $
行列を記述する際は、mat
関数を使用します。行列の要素は,
で区切り、行末には;
を使用します。
$ mat(1, 2; 3, 4) $
ここまで、Typstで数式を記述する方法について解説しました。数式の記述方法は他にも様々な記法が用意されていますが、基本的な記法を押さえておけば、多くの数式を記述することができるでしょう。ここで紹介できなかった記法等については、またどこかで深堀りしたいと思います。
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