トップ画像
無線給電 第四章

執筆者: 2D

最終更新: 2021/03/04

第四章 電界結合方式

電界結合の等価回路を以下に示す。なお、電極間で形成されるキャパシタンスをそれぞれC1、C2 (一般に$C_{1}=C_{2}$)、相互キャパシタンスをCmとしている。

図から、C1-Cm(C2-Cm)は漏れキャパシタンスとみなすことができる。また、相互キャパシタンスCmが大きいほど二次側に電圧を伝達しやすく成り、大きな電力を伝送することができることがわかる。相互キャパシタンスは電極面積を大きくしたり、電極間距離を小さくすることで改善することが可能であるが、どれも現実的にはある程度の制約が存在する。また、電極間に形成される容量は極めて小さな値である(試作電極板で200pF以下)から、これを超えて電力伝送するには大きな電圧や高い周波数が必要となる。
これを解決するために直列にインダクタを入れて共振させる方法(直列共振法)や、並列にキャパシタやトランスを入れることにより外部回路で共振系を構成する方法(並列共振法)などもあるが、電界結合方式自体が電磁誘導方式に対してマイナーであるため先行事例が少ない。故に、個人で電界結合を用いてワイヤレス給電を行ったという記録もほとんど確認されない(電磁誘導方式ならいくつも見つかるのだが)。しかし、1W程度なら個人実験レベルでも簡単に伝送することができる。図に示すのは私が実際に構築した電界結合方式の無線送電システムである。電極は中央に写っている200mm×100mm×5.5mmのMDFに貼り付けた銅箔であり、電極に限って言えば極めて軽量、低発熱である。

スペックを簡単に示す。
 
・電源電圧 12V
・送電電力 1W(二次側負荷100Ω時)
・周波数 580kHz
・効率 30%(DC to AC)
・最大伝送距離 6mm
 
高周波トランスは自作したものであるから、効率は更に向上させることができると考えられる。1W伝送時の負荷は100Ω抵抗であったが、図の通り負荷としてRE-280モータをつないでも十分に動作する(この場合はFRDで半波整流して適当な平滑コンデンサを接続した)。これを見ても分かる通り、電界結合方式というのは案外簡単に実現できるのだ。しかし、効率や手軽さ、システムの大きさといった点では電磁誘導方式に負けているため、まだまだ改善が必要である。なお、次の目標は水中での1W伝送である。

取得に失敗しました

2018年度 入部

Twitter